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先日、コチラの記事で、僕がマスタリングを担当させて頂いた『MIKUHOP EP』がツイッター上で話題になっている、と書きましたが、あれから数日経って、その時以上の盛り上がりを見せています。関係者からチラホラと「バズっている」という表現が出てくるほどに…!
これまでボーカロイド楽曲のツイッター上でのバズというのは、まず楽曲がニコニコ動画に投稿され、それがSNS上で関係者とフォロワーを中心に拡散され再生数が伸び、ニコ動のランキングに反映され、それがさらにSNS上での盛り上がりを喚起するという形が主流でした。言うなればニコニコ動画⇔SNSという、双方向での情報、ユーザーの流れがバズの主な発生要因になっていたワケです。しかしながら、今回の『MIKUHOP EP』に関しては、ニコニコ動画発ではなく、オモイデレーベルさんのbandcampからの発信という点で、これまでの形とは明らかに違っています。という事で、今日は『MIKUHOP EP』の、ボカロコンテンツとしては異例といえるBuzzを、マーケティング的な視点から考えてみたいと思います。
仲間ゴト→プチ炎上→ニュースサイト→Buzz!
『MIKUHOP EP』がオモイデレーベルさんよりリリースされたのが、6/1の事。最初、ツイッター上で騒いでいたのは主に制作関係者とそのフォロワー、それから少数のニュース・アカウントだけでした。それが、『ミックステープ文化論』の著者である小林雅明氏からのこんなツイート
つまり、コアなリスナーには、こんなんヒップホップじゃねえーよ、と怒られる内容でもあり @asaakim ヒップホップほとんど聴いたことない人向けですね@asaakim 昔の日本のレコード会社っぽい発想が継承されて吃驚。@omoidel http://t.co/i92bhECEtD
— 小林雅明 (@asaakim) 2014, 6月 2
を筆頭に、音楽面での批判コメント(黒くない、新しくない等、主にヒップホップサイドからの指摘)が上がるようになってきます。また、一部のボカロPさん達から、「ミックホップ」のタグや、名称、作品の紹介文などに違和感、不快感を表明するツイートがチラホラと。(これは「ミックホップ」という言葉の成立過程に原因があるようですが、今回の話の本筋とは直接関係がないので割愛します。)
もちろん、これらの批判だけではなく、賞賛や擁護のコメント、全く別の方向からの賛否も多々ありましたが、各発信者のツイッター上での影響力、フォロワー数まで含めて考えると、批判的な声の方が大きかったように思われます。言うなればプチ炎上状態にあったと言えるのではないでしょうか。この時点で「ミックホップ」「MIKUHOP」で検索したところ、ツイッター上にはおよそ160程のエントリーが見られました。(公開時から二日間の6/2いっぱいまで。リツイートは含まれていません。)
ちなみに個人ブログの記事としては、「ボカロmeetsヒップホップな「MIKUHOP EP」を聴いてみた - あざなえるなわのごとし」の影響力が非常に大きかったですね。こちらの記事をツイッター上で紹介されいる方も、相当数いらっしゃいました。
このプチ炎上がどの程度影響しているか定かではありませんが、こうした状況を背景に6/3、KAI-YOU.netさんにニュースとして取り上げられます。(もしかしたら、記事に取り上げられたのはオモイデレーベルさんの影響力もあるのかもしれません。)
ボカロ×HIPHOP=ミックホップ? 無料配信「MIKU-HOP EP」がキテる…! - KAI-YOU.net
こちらの記事が様々なニュースサイト、ニュースアカウントで紹介され、ユーザーにより拡散されることで「バズっている」と言われる現状があるワケです。
これらの状況と、ツイッターでの内容から推測するに、まず初めにリスナーさんに刺さり、“ダウンロードして聴く”という一手間をとらせたのは「ミックホップ」というワードだったと考えられます。ヒップホップ支持層の方々が反応したのも、ボカロPさんたちとそのフォロワーさんたちが反応したのも、KAI-YOU.netさんのニュースタイトルに「ボカロ×HIPHOP=ミックホップ?」とあるように、記事として取り上げて頂けたのも、全てはこの「ミックホップ」という新しいワードがあってこそのこと。
しかしながら、ただ「ミックホップ」というワードが物議を醸したという事、それだけがBuzzの原因ではないでしょう。そのコンテンツ自体に魅力が無ければ、「バズっている」と評されるような状態にはならなかったのではないかと思うのです。
“スマッシュ・ヒット”群を「パッケージ作品」として配布
この『MIKUHOP EP』に収録されいる作品は、6/1のリリースの時点で既にニコニコ動画で公開されいた作品ばかりです。これを書いている6/5時点では、空海月さんの『midnight music』が再生:6,860 コメント:116 マイリスト:520 、カテゴリランキングでは過去最高37位と、収録曲の中では数字的に一番伸びています。それでも、一般的にボカロ曲としてよく知られている『メルト』や『Tell Your World』、『千本桜』等には言うに及ばず、ニコニコ動画で「殿堂入り」と呼ばれ、人気作品とされる 必須要件10万再生の1/15しか閲覧されいません。
しかし、この数字は決して悪いものではありません。数あるボカロ投稿曲の再生数上位5%には、まず間違いなく入っているでしょう。(参考:Vocaloid界の厳しい現実を数字で見る動画)それだけ一般的に知られているボカロ曲が、ニコニコ動画では驚くべき数字を叩き出しているということです。ボカロカテゴリにおける『midnight music』のこの数字は、言うなれば“スマッシュ・ヒット”。普段から熱心にボカロ曲をチェックしているファン層、またその友人・フォロワーには評価されているけれど、ニコ動のボカロランキング上位にしか興味を示さないライト・ユーザーには届かない。といった所でしょうか。
それらの“スマッシュ・ヒット”作品を集めたものが、この『MIKUHOP EP』と言えるワケです。通常であれば、熱心なボカロファンにしか届かなかった作品たちが、何故こんなにも「バズった」のでしょうか?
まず初めに「ミックホップ」というワードで、ヒップホップやボカロに興味関心のある層が動きました。ある程度の盛り上がりを見せた所で、先述のニュースサイトや個人ブログが取り上げます。それらが拡散される事で、今度は、ヒップホップにもボカロにもあまり関心が無いけれど、音楽には関心がある、新しいジャンルの音楽なら聴いてみたい、というアーリーアダプターが動きました。こんなカンジの方々が
こういった曲を紹介するラジオ番組がもっと増えればいいのに。「千本桜がラジオから流れた!」なんて珍しがられるのは、なんか違う気がする。 / “ボカロ×HIPHOP=ミックホップ? 無料配信「MIKU-HOP EP」がキテる…! - …” http://t.co/bcYVjfRvIl
— 折出けんいち (@kenichioride) 2014, 6月 3
あ…コレいい。今後どれだけ新しい地平がひらけていくんだろう。 RT @shiba710: “ボカロ×HIPHOP=ミックホップ? 無料配信「MIKU-HOP EP」がキテる…! - http://t.co/TsVSUmOruZ” http://t.co/wQp7Ah9lw2
— ノグチアキヒロ (@natsunohinogogo) 2014, 6月 3
これは僕の推測でしかありませんが、ここへ来て『MIKUHOP EP』の「パッケージ作品」としての性格が上手く働いたのだと思います。KAI-YOU.netさんの記事にもありましたが、「ミックホップの入門的な作品に仕上がっている本作には、多彩で自由度の高い楽曲が収録されている」のです。各曲の完成度の高さはニコ動での“スマッシュ・ヒット”で折り紙つき、その上そのどれもが個性的。そういった個々の楽曲が、「ミックホップ」という枠を与えられた事で、“ジャンル”という新しい訴求力を持ったのだと考えられます。※
上記のふたつのツイートをみても、「ミックホップ」が単なるニコ動でのタグとしてではなく、幅のある一つの音楽ジャンルとして認識され、受け入れられた事が伺えます。今回のBuzzの実態は、言うなればニコ動に埋もれていた良曲が、ニコ動を介さない流通形態とプロモーションにより、潜在層に“再発見”されたということなのではないでしょうか。
※ダウンロード販売からストリーミング配信へと舵を切り、“音楽の分割販売”が加速する現在の音楽業界において、この「パッケージング」により付加価値を高めるという昔ながらの手法は、今一度見直される必要があるのではないかと感じます。
ボーカロイドはニコニコ動画から巣立つ時?
余談にはなりますが、この記事を書いている最中、『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?/柴那典』にあった、クリプトン伊藤社長の言葉が何度も蘇ってきました。
「ニコ動全体に占める再生数で、「ボーカロイド」や「歌ってみた」、要するにボーカロイドから派生した動画に対する再生数が、ウチの調べでは2013年のゴールデンウィークくらいからだいぶ落ち込んでいるという印象があります。理由は幾つかあるんだと思いますが、流行る曲調がだいたい同じになってしまったからということもあるでしょう。新しい曲を聴いても「これ、あの曲に似てる」っていう感覚を抱くようになった。」
僕が以前に書いた『2013年投稿のボカロ曲の中から一万マイリス越えの楽曲を分析してみた』でも触れていますが、ニコニコ動画での人気ボカロ曲の傾向は、近年、だいぶ偏ってきていることが否めません。テンポや使用される音色、ジャンルはほぼ固まってきていると言えるでしょう。
伊藤社長が仰るように、そのサウンドの偏りがニコ動でのボカロ人気に影を落としているのであれば、またニコ動というマーケットが、ある一定のサウンドしか受け入れられない場になりつつあるのならば、それにそぐわないサウンドを追求するボカロPは、今回のようなニコ動を介さない、潜在層にもアプローチ可能なプロモーション方法を考えていかなくてはなりません。ボーカロイドが一般層にも広く認知されるようになった今だからこそ、ニコニコ動画以外にも表現の場を拡張していくべきタイミングなのかもしれませんね。
もう先月の事になりますが、久しぶりにドラムンベースのイベントAQUANAUTS@Shibuya KinobarでDJをやらせて頂きました。ディープでアーバンな選曲を中心としたラウンジ感を重視したイベントで、リラックスした雰囲気でお酒と音楽、交流を楽しめるナイスパーティです。そこで興味深かった事をいくつか。
DJは今やUSBが基本!
現場ではもはや常識?最近のCD-JにはUSBメモリから楽曲をロード出来る機能が付いていて、その場でBPM検出はモチロン、高性能な機種になると波形表示までしてくれる!当日、僕の持ち込んだ機材の調子が悪くてプレイ中にノイズが乗りまくり。主催のMegsisさん(@DJ_Megsis)に、USBメモリでのバックアップを用意しましょう!と諭されてしまいました。申し訳ないm(_ _)m アナログレコードをキャリーカートに積んで街中をゴロゴロと移動してた頃に比べると、PCでDJをするようになってから大分荷物が減って楽になりましたが、それでもPCDJはセッティングが煩雑だし、トラブルがつきものという印象だったので、その内もっとシンプルなタブレットを主体にしたスタイルに移行しようカナ?と考えていたところ、現場はもっと先を行ってました。今やUSBメモリとヘッドフォンだけ持ってDJをしに行く時代。なんてカジュアル!当日はBistroさん(@Bistrojazz)や、AYAさん(@Aya_1206)がこのスタイルでしたね。楽曲検索アプリShazamが人気?
当日DJをされたga_ck_ieさん(@ga_ck_ie)と遊びに来ていたたくまさん(@Tacumille)が、フロアでスマホをスピーカーに向けて何かしている。きいてみると、Shazamという楽曲検索アプリで今かかっている曲を調べているのだそう。スマホのマイクで拾った音声を元に検索しているという事は、楽曲の波形を照合する事で探してくれるのかな?ドラムンベースの楽曲はDL販売かアナログでの流通がほとんどなので、そういうものでも検索に引っ掛かるの?とたずねたところ、精度はかなり良好で、Beatportのような有名どころで販売されているものであれば、ほとんど引っ掛かるそう。街中でも、ふと耳にした楽曲が気になってしまう僕みたいな人種にはこれは便利!(もっと言えば、最近のヒット曲には欠かせない街鳴りとWeb鳴りを結びつける革新的なアプリかもしれない!)イベントはソーシャルメディアのオフ会
一番印象的だったのは、出演者であるDJ、遊びに来るお客さんの殆どがTwitterなどのソーシャルメディアの繋がりで参加していた事。端的に言えばこのイベント自体が、ソーシャルメディアにおけるコミュニティをリアルに持ち出したものと言えそうです。DJ同士、お客さん同士で直接的な繋がりが無くても、誰かのネットワークを経由して必ず繋がっているので、自己紹介はTwitterアカウント、Facebookアカウントの交換になり、比較的スムースに交流を持つ事が出来るし、また同時に参加者がスマホで、遂次イベントの様子や感想をSNSに書き込むので、現場にいないフォロワーさん達ともイベントを共有できる。これでUstreamでの中継が入ったりすれば完璧!00年代半ばのまだSNSが流行りはじめの頃は、クラブでのSNS利用はあくまで補完的なものだったような気がします。初めてその場で会って、次にいつ会えるかわからないケド、どこかのイベントでまた会えた時に忘れないようにフォローしあう、名刺交換みたいなノリだったと思うのだけど、ここではそれが完全に逆転しているのが面白い。ソーシャルメディアで築いた繋がりをリアルで深めたり、間接的な繋がりを直接的なものにしたりと、交流を軸に据えたイベントだからこそ会話の邪魔にならない控えめな音量。そして、ドラムンベースという中音域が薄くて、声が通りやすいジャンルが驚くほど上手く機能していると感じました。
実際、他のクラブイベントに行くとメインフロアよりもラウンジの方が混んでいるというのはざらで、みんな音楽という共通の話題の上で、交流を楽しむという傾向が強くなってきているように思います。AQUANAUTSみたいなイベントが現れたのは時代の流れに沿った必然(Megsisさんのマーケティング能力の賜物!)で、これからより交流に軸足を置いた、ソーシャルメディアのオフ会としてのクラブイベントが増えてくるのかもしれませんね。
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この曲のマスタリングではM/S処理を使って、空間を広げる方向で調整してみました。M/S処理というのは、ステレオの音声ファイル(通常LRの2ch)をMid(中央)Side(外側)の2chに変換し、それぞれのチャンネルを個別に調整するものです。元々はMSマトリクス方式と呼ばれる、Midを捉える単指向性マイクと、Sideを捉える双指向性マイクを使ったレコーディング方法から来ているそうで、この方式で録音された素材をシミュレートするのが、このM/S処理です。僕自身もまだまだ勉強中の身ではありますが、今回の作業を通して感じたM/S処理におけるメリット、デメリットについてちょっとだけお話させていただこうと思います。
LRのステレオファイルをM/Sに分割する方法については、コチラのサイトが詳しいのでご参照下さい。
M/S処理におけるメリット
①Midに比べると音量が小さく、容量にも余裕のあるSideを持ち上げる事で簡単に音圧が上がる。(フェーダーで上げても、リミッターやマキシマイザーを使っても良い。)
②リバーブ成分の多いSideを単独で扱う事が出来るので、空間の大きさをフレキシブルに調整できる。
③Sideを上げる事でセンターに位置するボーカル、ドラム等の残響も上がり、ステレオ感が強くなる。(リバーブとは一味違った、ルームアンビエンスを上げたような効果がある)
④MidとSideに個別のエフェクトをかける事が出来る。Sideに流れた不必要な低音域はバッサリとカット。EQ・コンプでMidにパンチを効かせる。等
今回の曲では特に②・③のメリットが大きく作用したように思います。空間が広がり、ステレオ感が強くなる事で、幻想的で儚い雰囲気をより強める事が出来たんじゃないでしょうか。
M/S処理におけるデメリット
①Sideを上げていくと、Midが下がりボーカル、ドラムが奥に行ってしまう。(相対的にボリュームが下がるだけでなく、ステレオ感が強くなることで音の芯が無くなってゆく。)
②リズムのグルーブが変わる。(リバーブ成分が持ち上がり残響が長くなるためと、①によってドラムのパワー感が減る。)
③極端な調整をすると定位が曖昧になる。意図した定位から大きく外れてしまう。
今回の曲のように①が、あまりデメリットにならないアレンジならまだ良いのですが、パワフルなロック等で、音圧を上げたいがためにSideを上げていくと、ビート感が犠牲になってしまう上に、ボーカルが引っ込んでしまいます。やり過ぎ注意!
※中田ヤスタカさんも積極的に採用しているというM/S処理ですが、氏の手掛けるPerfumeやCAPSULEの曲では音圧高くステレオ感も強くありながら、ビートが犠牲になっている、という事は全くないように感じます。この辺りはやり方次第なのでしょうか!?要研究ですね!
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まずは、ジャンルから見ていきましょう。注釈:ジャンルの分類には、様々な視点、方法論があり、この統計は筆者の知識と感覚に委ねる部分が多々あります。今回の分析の中でも一番曖昧な部分になりますので、ご参考までに留めて頂ければと思います。
特にロック、ポップ・ロック、ポップスの三つの項目に関しては、具体的な相違点が挙げにくく、使用音色やリズム、コード進行やミックス等から総合的に判断しています。具体例を挙げると、じんさんのロスタイムメモリーをロック、スズムさんの世界寿命と最後の一日をポップ・ロック、40mPの純情スカートをポップスと判断しました。この三項目に共通する要素としては生音系の音色を主体としたバンドサウンドであることです。
クラブミュージックの項目には、808系のキックを主体としたいわゆる四つ打ちや、ブレイクビーツ等のエレクトロニックビートを主体とするサウンドを分類しています。テクノ・ハウス・エレクトロ・ドラムンベース等がここに含まれます。:注釈ココマデ
かねがね言われている事ですが、やはりボカロック路線の人気は磐石。ロックに分類したものだけでも60本、ポップ・ロックまで含めれば81本と、全体の60パーセント越えという圧倒的な数字です。クラブミュージック系の楽曲も頑張っていますが、この中にハウスからドラムンベースまで、様々なビート、BPMのクラブサウンドを含んでいますので、決して多いとは言えないと感じます。また前回の分析でも少し触れましたが、バラード系の楽曲が思いのほか多くありました。これらの分類はBPM90前後でビートが際立たないもの、としていますが、アレンジの傾向としてはロックバラードからエレクトロニカ的な手法を含んだものまで様々です。
次に使用されている音色を見ていきましょう。まずは全ての楽曲で使用が確認できた、ベースとドラムスのサウンドから。ベースはエレクトリックベース、ドラムスはアコースティックドラムが人気です。ベースは生演奏から、打ち込みによるピッキング、スラップ、フィンガーピッキングのシミュレートまで幅広く、特定の音源への偏りは無いように思いますが、ドラムに関してはレコーディングの難しさ、煩雑さからか、アコースティック・ドラムのシミュレート音源(Addictive DrumsやBFD、Superior Drummer等)と思われるサウンドが目立ちました。上の図を見ると、今回たまたまエレクトリックベースとアコースティックドラム、シンセベースとエレクトロニックビートの使用数が、それぞれ近い数字になっていますが、エレベにエレクトロビート、アコドラにシンベといった組み合わせもチラホラあり、Pの意向や曲調に応じて柔軟な組み合わせが試されています。(それでもエレベにアコドラの組み合わせが一番多いのが実状ですが)
続いて、非常に使用率の高かったギターの内訳が以下。まず驚いたのがギターを全く使っていない楽曲は全体の10%、139曲中14曲のみだった事。そしてディスト―ションギターの使用率が、アコギ、クリーンとの併用まで含めると75%、139曲中105曲にも及ぶ事です。この105曲全ての楽曲がディスト―ションギター主体のサウンドという訳ではありませんが、(ジャズの中でバッキングに使われたり、クラブ系の曲で部分的に使われたりといった、裏方的な使われ方も多いです)ジャンルを越えて、これだけ高い割合でディスト―ションギターが採用されている事は、ボカロシーンの一つの特色と言えそうです。ギターは比較的、打ち込みでのシミュレーションが難しく、ご自身で実際に弾かれているPさんや、弾いてみたのプレイヤーとのコラボもチラホラ見受けられました。とは言え、そうそう身近に弾ける人がいるPさんばかりではないでしょうから、ELECTRI6ITYやREAL GUITAR 3といったギター専用音源も多々使用されているものと思われます。
対象となった139曲を聴いていて、他に耳に残った音色としては、まずピアノ。これは61曲での使用が確認出来ました。ジャズやポップス、バラード等のメイン伴奏としてだけでなく、ギター・ベース・ドラムのストレートなロックサウンドに、プラスワンとして、カウンターメロディやオブリガートを担当する場面も多々あり、ジャンルを越えて採用されている音色の一つです。
次いで、シンセのパルス波やサイン派、もしくはそれに近い音色を使った、チープでレトロないわゆるピコピコサウンドも数多く聴く事が出来、139曲中57曲で使われていました。これはカウンターメロディやオブリガート、アルペジオ、ブレイク部分等で聴く事が出来ます。個人的には、この手の音がボーダーレスに様々なジャンルで使われていた事が、今回の分析で一番驚いた点でした。エレクトロ等ではお馴染の音色ですが、ロック等にも積極的に採用されいるのは、ボカロシーン独特のものではないでしょうか。
以上の事から①バンドサウンドが支持される傾向にあり、クラブサウンドの中にもそれらの要素を取り込んだものが見受けられる。(ギターの使用率が9割に上り、ディスト―ションギター・エレクトリックベース・アコースティックドラムといったバンドサウンドを特徴づける楽器が全体の75%の楽曲で使用されている。)②ピアノやピコピコサウンドは40%程の楽曲で使用されており、ギター・エレベ・アコドラに次ぐ人気。シンプルなバンドサウンドに、これらの音色を追加した編成も多くみられました。補足として、ピアノやピコピコ程の使用率はありませんが、イントロ部分、間奏などでシンセによるリードメロディ、サビ部等でバックグラウンドを埋めるストリングスやオルガンの音色、ブラスによるカウンターやオブリ等もよく聴かれました。
現在はmirgliP名義でのボカロ曲投稿を中心に活動中!これまでの投稿動画はコチラ
twitter : @mirgliPilgrim
Mail : pilgrim_breaks@hotmail.co.jp